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30周年を迎えたSLやまぐち号の取材の報告

社会交通工学専攻  冨尾 勝吾

1. はじめに
 本年は山口線で活躍する、SLやまぐち号が復活運転して30周年という節目の年を迎えた。8月15日の重連運行を一目でも記録したいと思いつつ、今夏シーズンは実家の帰省のついでに自然豊かな長門峡をはじめ、撮影ポイントで狙うこととした。
 当日は全国的な大雨の影響で撮影スケジュールに支障をきたすのではないかと考えていたが、当日は奇跡的にも天候が回復しそれなりの運転を見せてくれたので満足である。
 撮影ポイントには全国各地からのカメラマンが集まり、中には徹夜組の人もいらっしゃったようだ。




2. SLやまぐち号とは?
 昭和40年代の国鉄の近代化・合理化により全国の蒸気機関車が廃止にされていった。山口線も例外ではなく昭和48年10月には山口線からもSLが姿を消していった。
 一旦は廃止されていったSLであったが、多くのSLファンや地元市町村を中心にSL復活への気運が高まり、当時の国鉄総裁の大英断で昭和54年8月1日、山口線にSLが復活することになった。現在、「貴婦人」の愛称で親しまれる「C57-1」は、山頭火が愛した「新山口」を出発し、「湯田温泉」、大内文化の香り漂う「山口」、四季折々の情緒を楽しめる「長門峡」、山陰の小京都「津和野」までの62.9kmを約2時間かけて、多くの人の夢を乗せて走っている。





C57-1号機を筆頭に橋梁を通過するSLやまぐち号



3. C57-1号機の概要
 C57形蒸気機関車は1937年(昭和12年)から201両製造された亜幹線旅客用蒸気機関車である。C55形を改良して誕生したものでボックスセンター動輪の採用、使用圧力の増圧など近代化されているのが特徴。全国各地の主要路線で活躍したC57は、その優美なイメージから「貴婦人」の名で親しまれている
 現在C57型は、1号機の他、磐越西線の動体保存運転として180号機が配備されている。



4. 当日の取材をやってみて
 前述のとおり、撮影ポイントには全国各地からの撮影者でにぎわったが、無事撮影が完了した。私が構えたポイント付近の違うポイントでは熱中症により救急車に運ばれた者もいたようだ。天候は快晴ではないとはいえ、日中は陽射しが強かったので熱中症対策は怠らないようにする必要がある。
 下り列車(9521レ)の長門峡での撮影は、牽引機の迫力がじっくり楽しめるところだ。しかし、煙の出は少し控えめな感じがした。あくまでも観光列車であり下り列車であるので運転事情からすると仕方ないところもあるが、次にリベンジの機会があればぜひ噴煙をあげる下り運転を期待したい。
 その後私はSLの終着駅である津和野駅まで向かい、上り列車の時間まで山陰の小京都と言われる津和野の町並みを散策してみることとした。
 SLの話から脱線するが津和野は古くから城下町の街並みの面影を残し環境保全地区として制定され、対象地区の一部(後田地区)は平成6年度に都市景観100選“大賞”を受賞した。こういうところには社会人になるとなかなか行けなくなると思うので訪問した価値は高いと思った。




整備が行き届いている津和野の景観


 その後、新山口行きの列車(9522レ)の撮影に向かう。ここの撮影スポットも連日賑わっているが、津和野中心部から離れている以上徒歩での移動は困難だ。
 そこで私は、津和野駅前のレンタサイクル店に立ち寄り、ひたすら撮影ポイントに北上した。すでにポイントには三脚を立てているカメラマンの姿があり、速やかに撮影の準備に入った。目標の列車が来るまで、地元の農家の方が線路を渡っていたりするなど少しひやっとした時があったが、地元では日常の風景のようだ。ちゃんと列車には気をつけているらしい。
 お目当てのやまぐち号がくるとギャラリーは一斉にシャッターを構えた。噴煙がものすごかった。重連のカマがポイントに近づく風景は圧巻である。唯一心残りだったのはC-57が先頭に来てくればなおよかったと思う。当日は風向にも影響されなかったことも幸いだった。その後充実した気持ちで現地を後にし、実家までの帰路へと向かったのである。




津和野〜船平山にて噴煙を上げるC56-160号機



参考文献

1)復活運転30周年 SL「やまぐち」号パンフレット 山口線SL運行協議会事務局 編集発行
2)国土交通省 都市地域整備局 公園緑地・景観課 景観歴史文化環境整備室
http://www.mlit.go.jp/crd/townscape/townscape_b/jusyou/06machinami/tsuwano.htm





 
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